第3者の噂。

          
真里菜の恋愛の生き証人である友達のMさんは、三日後に占い館に来た。

 「真里菜、メール100回、彼に送ったんですって!すごいわ、私ならとてもできない」
 真里菜のこの行為は、友達の間でも評判になっていた。女性の情報伝達はすぐに広まる。おそらく、友達を中心に何十人と広まっているのであろう。

 当然、彼から返事がなくて、真里菜が落ち込んでいるのをMさんは知っていた。

 「真里菜さんのために、Mさんにお願いがあります」。 「はい、なんでしょう」。

 「Mさんが前に付き合っていた彼は確か浩二君と親友ですよね」。「えーそうです」。

 「その元彼に連絡とって、真里菜さんが今ひどく落ち込んで傷ついているのを元彼を通して、浩二に伝えたいんだ」。・・・

 「・・・でも、私元彼とは完全に終わったし、いまさら連絡とりたくない」

 彼女は、元彼と連絡とるのを初め嫌がった。しかし、真里菜の状況、私の話を聞いているうちに、その方法がいいと考え直してくれた。

 Mさんは、久しぶりに元彼にメールを送る。真里菜の思いを託して。。。。

 Mさんのメールのしかたがよかったのか、元彼は実にいい働きをしてくれた。男冥利に感じたんだろう。男は別れた彼女でも、女の子に頼まられるとやってやろうという気になる。まして、自分たちのことではなく、人を助けるためと思えばヒーロー的な正義感が働くのだ。

 たぶん彼は、親友の浩二へ、真里菜はひどく傷ついている。女を泣かすのは男ではない。と男の友達らしく、浩二に言ったと思う。

 浩二の性格は、真面目で、信頼できる人間を大事にする。信頼している親友に言われるから彼はたまったもんではない。今まで、自分の問題だけだと思ってたものが、まさか男友達から言われるとは夢にも思っていなかった。

 当人同士では気づきなかったことが、第三者を通すとはっきり分かることがある。

 「真里菜は悲しんでいるのだ、彼女を傷つけているのは僕だ・・・」。

 Mさんから、私に連絡があった。

 「元彼にお願いしておきました。彼、ちゃんと協力すると約束してくました。もちろん私が言ったということは浩二に内緒で」。

 「ありがとう。これで、きっと浩二君から真里菜さんに連絡いくと思います。助かりました」

 「いえいえ、真里菜のために、お役立てて私もうれしいわ」

 「それから、そのことは真里菜さんに内緒にしてください。君がやった行為は陰徳にしたいので」

 「陰徳?・」  「隠れて善い行いをする行為です。一生二人の秘密にしましょう」

 「わかったわ♪」

 その夜。

 私と、真里菜はメールのやりとりをしていた。どちらかというと、将来の夢だとか女を磨くためにこんなことにチャレンジしたいなという人生観についてのメールのやりとりである。

 何回かやりとりしてて、彼女のメールが途切れた。もう寝たのかな?・・・

 30分ほどたって、突然、真里菜から電話がかかってきた。

 「もしもし、沖川さん彼からメールが来ました!」そう言った後、彼女は涙声になった。。。

相談2 涙のわけ。

大粒の涙がとめどなく流れる。。。。

 声えを出して「ワーッ」と泣くわけではなく、静かに涙腺から水の輝きが光って頬を伝わりながら零れ落ちていく。4人は静かな愛しく可哀相な空間を過ごす。ほんの数分だったが。

 女性が涙したわけは、私の一言だった・・

 「彼はそうとう傷ついたんだね」。

 土曜の夜、3人の女性のお客さんが占い館に来た。3人は仲良しグループで学生時代からの友達らしい。3人は久しぶりに飲み会をし、帰りに友達の評判を聞いたという理由で占いに来たのである。

 仲のいい3人なので、プライベートの部分は聞かれてもいいと言うことなので、3人同時に鑑定室に入ってもらった。女性客は複数で来られることが多い。鑑定も同時に希望することが多い。どうやら一人では不安らしく、一緒のほうが心強いみたい。また、待合室で待つのも淋しい。

 3人とも四緑木星の人で、年齢は25歳である。そろそろ結婚を真剣に考える年頃である。もちろん相談は、恋愛から結婚の流れまでを見てほしいという希望である。

 一人目のお客さんを見ていくと、「あなたの次の出会いの時期は、もうすぐだね・半年後ですよ」と私が言うと、アルコールが少し残ってるせいか、3人はキャーキャーうるさいのである。がぜん盛り上がってきた。二人目はちょっと恋愛運が弱く、2年先に薄っすら相手が見えます。少し頑張りましょう。そういうと本人は不満らしく、「そんなに待てない。」何とかしてという。うーんこればかりは、本人の努力以外方法はない。手相は今現在のあなたの能力から割り出して先を読んでるのである。恋人が現れるのに2年も先になるのは、本人が異性を求めてないか、今恋愛をする気ないのである。それを言うと、「そうだよね、今彼氏ほしいと思わないもん」と言った途端、「Kちゃん、彼氏ほしくないのに、先生に何とかしていうのはおかしいよ」最初に見た子が言うと3人は大爆笑である。「いいわね、Mは半年後に彼氏できるから、私なんか2年先だって!やんなっちゃう、もっと女磨かないと!」私も含めて4人笑う。。。

 3人は占い好きで、有名な新宿の母や大泉の母など暦占してた。私なんか無名に比べると日本を代表する占い師の名前が続々でてくる。「他の先生方は、どんな占い方してたの?」逆にこちらが教わるくらいである。新宿の母は10分くらいで、お父さんが病気だと当てた。恋愛のこと聞こうと思ったけど時間で終わっちゃった。大泉の母は生年月日と名前でやったかなあ、Kなんか竹で肩をぶたれた。すごく恐かった。あと10分1万円の占いしたことあるけど、あまり当たってなかった。などなどである。

 はあ、すごいね。まあ、私は私なりの方法で自分のペースで占いを進めた。

 初めの二人は占いを楽しんでるふしがあって、私の話をいいアドバイスくらいにと受け取っていたのである。私もそのつもりで、アドバイスを続けた。ところが視線が気になる。

 その視線は3人目の子だった。

 二人に話した私の話を、一言も聞き漏らさず聞いていたのである。真剣に勉強をしている学生のように、講師がいった言葉を全部記憶しようとする態度で、真剣な眼差しを感じた。

 3人目の女性に占いの順番がまわる。手が汗でびっしょりである。よほど緊張してたのであろう。

 そして、その女性がつい最近大失恋したことを知る。4年も付き合った相手だった。

 「君が裏切ったのですか」と私が聞くと、女性はコクンとうなずく。そのとき彼女の涙腺は緩んでいた。「彼はそうとう傷つきましたね・・」といった途端・・大粒の涙が零れた。

 それまで、フレンドリーな雰囲気が、いっぺんに静かな湖畔になった。仲の良い二人の友達も彼女の心情を察しているので、下をむく。Mちゃんはそっとハンカチを涙してる彼女に手渡す。

 その子の涙は感動であった。私も心をうたれ、友達もそうであった。

 何とかしてやろうという気が、その涙には十分あった。