最終回。(赤ちゃん誕生)

出産前に、間に合ってよかった。

 普通占い師とお客さんの間柄は、相談中は親身に相談に乗り、相談が終わるとその時点で他人になる。さばさばした関係で、プライベートな領域には首を突っ込まない。ところが、そのお客さんと私の関係は親しい友達や肉親に近い感情になった。まるで我が娘のように無事出産できることを祈った。

 彼からの電話がきっかけになり、二人の仲は改善されていった。むしろ以前より愛情の結びつきは濃くなった。彼は、今まで自分がやったことを彼女にわび、自分も悩んで苦しかったことを彼女に素直に告げた。これから二人で頑張って赤ちゃんを育てていこうとも言ってくれた。やっと彼女の心は平和になった。

 予定日まで、あとわずかである。

 彼女の赤ちゃん誕生までは、壮絶なドラマが展開していった。失恋からスタートし、心を前向きにして復活を遂げた。楽しい日々もつかの間で妊娠した事実が発覚。妊娠を知るやいなや男は無責任にも逃げようとする。さんざん悩んで彼を説得する。やっと説得しても彼はお金をいれようとしない。これでは将来が不安と思って勇気を出して彼の親と相談する。が、そこでとんでもない事件が起きる。そのドラマを結びつけたのは、最後は愛の力だった。占いではダメと鑑定された恋愛である。

 ドラマを結びつけたのは、ただただ彼女の頑張りだった。これだけ悪い方に物語が進むと普通は途中であきらめてしまう。うまくいかない子は大半が途中挫折である。事実そういったお客さんをいっぱい見ている。もちろん決めるのはお客さんで中にはあきらめたほうがいい恋愛もある。それでも重要なのは自分が心の底から求めているの何なのかである。「心の底から求めているもの」それを決めることである。

 彼女はそれを決めた。そして決めたことを最後まで変えなかった。どんなに辛く不安で悲しくても最後まであきらめなかった。その精神が自分が望んだものを引き寄せた。

 彼女は盛んに私にお礼をいったが、いえいえ成功したのは君自身の力だよと言った。

 それからしばらくして、私の携帯にメールが来た。可愛い赤ちゃんが写った写真入りのメールだった。朝方の4時だった。「おめでとう○○ちゃん」そしてこの子の名付け親に私はなった。

 もちろん二人は、これからも波乱万丈が続くでしょう。でも彼女がしっかりしている。それが私の救いである。苦しい生活も彼女なら乗り越えられると思っている。

 相談 終わり。

愛は勝つ☆

あとは彼の愛情だけが頼り。

 彼女は不安で淋しいのか、今夜も私のところに来た。

 私は、彼が今考えていることを私なりに分析したことを伝えた。

 「そうかなあ、入院して10日も立つのに私にはぜんぜん連絡ない。そんなに私のこと好きならば、なんらかの連絡あるはず。音沙汰なしです。それでも、携帯はいつも気にして見てます」

 彼女はあの事件から、あきらめようと一度は決心したが、あきらめられないで引きずってる自分がいることを話してくれた。彼女も、この10日間はいろいろ考えたらしい。

 「あまり深刻に考えると、赤ちゃん、母体に良くないよ」と即しても、今の彼女は聞き入れないだろう。何とか、赤ちゃんが生まれる前にこの事態を良くしたいと思った。

 「しかし、何故あいつは連絡よこさないんだろう」

 「たぶんそれは、彼が入院しているのは大学病院だし、高度医療の病院のせいだと思う。電波法があって、病院の中で携帯使うと医療器械に弊害をもたらすからさ、特に大学病院は重症の患者が多く、ペースメーカ・脳波形・心電計・ハートモニター・人口呼吸器・保育器など患者の生命を監視してる器械に影響があると、患者の命に関わるからね。大学病院には、そんな医療器械がいっぱいあるから」

 「そうなんだ、私が入院したときは、隠れてメールとか打ってたけどね」

 「病院によってさ、大学病院はその点は普通の病院より厳しいと思うよ」

 。。。。彼女の携帯に着信音。。。「??公衆電話だ?」

 電話の主は彼だった。

 「ゴメーン、連絡しなくて悪かった。ここ携帯ダメなんだよ。看護婦がうるさくて、元気してたあ」

 と悪びれのない声で電話してきた。彼女は「どんだけ心配したか分かんなかったの!」と強い言葉でいっても、彼はあんな事件があったこと、人事のように忘れてた感じで電話してきた。

 ほんと、彼女といると偶然が重なる。彼女が10日間一人でいても電話ないのに、私のところに来ると彼からよく電話がかかってくる。まるで、この恋愛の行方を見守ってほしいといわんばかりに。

 どうやら、彼は病室では携帯を使って電話できないので、松葉杖をつきながら公衆電話のあるところまで、頑張って足を運んで電話してるらしい。

 私は席を立つことにした。たっぷり話しなさいと彼女に目線を送りながら。

 外で一服しながら、「愛は勝つ」とつぶやいた ☆外はいい星空だった☆

 次回へ。