助けてくれた、お客さん

彼が、入院して一週間が過ぎた。ケガの状態は何も分からない。

それにしても、人情がない、仕打ちである。息子がケガしたのは彼女の責任ではないのに、向こうの親にしてみれば、すべてが、彼女が悪いと決め付けている。親ってそういうもんかもしれない。どんな状況でも結局わが子が大事で、自分の可愛い息子を傷つけた女を許さない心境だろう。

私は、このままではまずいと思って。彼のケガの状態を調べることにした。

確か、お客さんでそこの病院の看護士がいたはず、占いで来られた1000人分のリストをチックした。あった。確かそこの病院のOP室に勤務してるはず。そう言えば、手術中の整形外科の先生の話題になって、切ってはいけない神経を先生が間違えて切ってしまったと、いう話を聞いた記憶がある。

さっそく、そのお客さんに電話してみる。

「あれ・先生久しぶり、ああ今度また、友達と先生のところ行こうと思ってたんだよ。さっき○○ちゃんとそういう話してたんだ。ところで、先生どうしたの?」

「実は、○○さんにお願いがあって電話したのです」私はかいつまんで事情を話した。

「ああ、ICUに入院してる○○さんね、分かった調べてあげる。もちろんそのことは向こうの家族には内緒ね。それとあそこの主任看護士、意地悪で患者さんからの評判も悪いんだ。彼女にあまり気にしないでと伝えてください。35過ぎのオールドミスでどうも若い女の子が嫌いらしい」

「サンキュー○○さん」「その代わり今度の占いサービスしてよ」「分かった大サービスする」

翌日の夕方、報告があった。

彼はICUから一般病棟へ移ったことのこと、ケガの状態は、頭を18針縫ったこと、MRIで脳の断面図を解析したところ、脳には異常はなかった。一時期の脳震盪で気を失ったこと、右ひざの関節を打撲してるので、アイシングで冷やしてる。ヒビまではいってない。あとは顔の部分や地面と接触した部分が擦り傷やアザになっている。命に別状なく、若いから2週間程度で退院できるとのこと。しばらくは松葉杖のお世話になるかも。という内容であった。わざわざ、カルテまで見ての報告だった。さすが、私のお客さん、十分に安心する内容だった。

そのことを、早速彼女に伝え、彼女は一応安心した。その看護士さんになんとお礼いったらいいか、すごく感謝してくれた。私もその看護士さんに感謝した。「ありがとうございます」。

自ら自分を傷つける男

 携帯の着信音、「彼女からだ」夜中の1時を回っている。こちらは床についたところ。

 そろそろ眠ろかという瞬間、私はいっぺんに目が覚めた!

 「彼が2階から飛び降りて、大怪我をしたんです」

 「えー!、どうした!、それでケガは」

 「分かりません、彼は意識がなく、救急車で運ばれました。私は警察から事情を聞かれて、これから家に帰るところです」

 「何があった?」彼女はパニックでうまく話せない。

 要約すると、彼の実家で彼の母親を交えて3人で話し合ったらしい。彼の母親とは今回初めて顔を合わせて話をした。妊娠して出産を控えている彼女の状況、赤ちゃんが生まれたあとの今後のことなどを相談をした。彼女も最初は緊張してたが、大人である彼の母親は彼女の心境を理解して話を聞いてくれたので、彼女も、ああこの人なら、話を聞いてくれそうと思ったらしい。彼から聞いてた母親像とはだいぶ違っていたのである。妊娠や出産に関しては同じ女同士、共感するものがあるんだろう。そこで、出産費用や今後の生活費について彼女は話を切り出した。彼はその話になると、不機嫌そうな顔つきになった。彼女は彼がお金出さない、誠意がないという今までのストレスがたまっていたのだろう。それを彼の母親にぶちまけた。彼の母親も「そんなことはない、うちの子はお金を渡してるはず」・・どうやら彼は母親に嘘をついてたらしい。「ちゃんと責任果たしてると」そのことがきっかけで、彼女と母親、女二人が彼を非難し責めた。彼は激しく母親に責められ。彼女もそのざまを自分が苦しんだ分いいきみだと思った。

 その瞬間、彼がとったのは、とんでもない行動だった。

 「どうせオレが悪いんだ!、オレは何やってもダメな男だ!」と激しく、とち狂ったあと、2階の窓から飛び降りたのである。一瞬の出来事で、悲鳴すらあげる余裕がなかったらしい。

 彼が1階の縁石にしこたま頭を打ち、血を流して倒れてる姿を見て、母親は悲鳴とともに気が動転し、彼女も動転した。急いで1階に下りると、彼の頭から鮮血が噴出してる。彼女はマタニテイーの服が真っ赤にそまるほど、止血をした。そのとき、あわれな彼をみながら、彼を追い込んだ自分の反省と、これからどうなるんだろう、もうおしまいだという気持ちが交錯した。

 救急車が到着し、彼を運ぼうとした、彼の母親と一緒に彼女も同乗しようとしたが、母親は鬼のような形相で彼女を制した。・・・遠ざかるサイレンの音、彼女はぼーと立ちつくした。

 こんなことになるとは、私自身予想もできなかった。

 正直、悩んだ。彼と彼女を結びつけるのは不可能なのか・・・障害を乗り越えることは不可能かと。