子供を生む決心

彼女は二度目の妊娠である。まだ、20歳。
 
 一度目の赤ちゃんは中絶した。19歳のとき。

 彼女は同棲した経験がある。

 同棲相手の男は高校時代の先輩である。当事の若者グループの間柄。その男はグループの中でもひときは目立っていた、リーダー格である。その男と恋に落ち、同棲を始めたのである。

 同棲して、間もなくその男は家に帰らなくなった。他に女ができたのである。週に一回帰ればいいほうで、彼女には淋しい日々が続いた。それでも、やさしいところもあり、「この金で、好きなもの買いな」と生活費は置いていく男らしい面もあった。彼女は先輩でもありグループのリーダーをはってたその男に、頭が上がらないのである。強さと怖さも知っているので、いいなりになっていたのである。

 大人から見れば、そんな男のいいなりになる必要性はまったくないが、あの年齢の若者の心境では先輩と後輩の差は天と地ほどの差がある。そしていいなりになり、自由が奪われるのである。

 そして、妊娠。かっこはつけているが、社会的責任を果たせない悪い男である。

 妊娠と同時に、男は逃げていき、彼女は一人取り残された。そして、彼女はなくなく中絶を決心したのである。そのときの彼女の悲しみは想像を絶するもんだった。

 悲しみのあと、彼女は決心した。今度赤ちゃんができたら、何があっても絶対生むと。

 彼女の手相を見ると。

 子供は存在しているのである。中絶ではなく。ちゃんと彼女の21歳の位置に存在している。

 「赤ちゃんはちゃんと生まれますよ、君には子供ができる」と言うと。

 彼女は、涙を落とした。。