晴れた、日曜日の夕方。
占い館の駐車場に、黒いセダンの車が入ってきた。中古だと思うが少し改造してある車である。
30分ほど前に彼女から連絡あった。「今から向かいます」
私自身、彼に会うの楽しみにしていた。「さて、どんな男なんだろう」
その若い男は、少しおどおどしながら彼女と中に入ってきた。
「車で走っていたら、占いの看板が見えたので、見てもらおうと思い来ました。二人とも占いに興味があるので、よろしくお願いします」と彼女ははっきり言う。なかなかの演技である。
鑑定室に二人一緒に入ってもらった。
最初に、彼女の手相を見て、型とおりの占いをし、最後に、「彼女妊娠してますね」と彼の顔色を見ながら言うと、彼は「はい」とうなずいた。
「おとうさんになるんですね」と言うと彼はこくんとうなずいた。
ここで、私からの提案で、「彼の方は一人で見たいので、彼女は席をはずしていただきたい」と申し出ると、彼女はうなずき、外の車の中で待つことにした。もちろん、後で内容は報告すると彼女には事前に言ってある。
それから彼の手相へ。
最初に見たのは、彼女への愛情線。
安心した。彼には彼女に向けた強い愛情線があった。しかも、彼女より強い。
結婚線は、やはり障害となっている、と同時に自信がない。
性格は、優しいが依存心が強く少し頼りない。しかし、プライドは高く負けず嫌い。
運命線は若い頃はフラフラしている。安定するのは35過ぎてから。
全体に体力はあるが、精神力が弱い。
知能線は、短気、優柔不断、物事を深く考えないで行動する。
仕事運は、一人前になって社会で安定するには後10年はかかる。
彼が来る前に、私が予想してたのとほぼ同じ手相であった。違いは、彼女に対する愛情が思ったより強かったことである。<彼は彼女のことよっぽど好きなんだ>
だが、彼には半年後にアイランドが陰った(苦悶)の線が見える。彼はその時期に傷つき、苦しむ。
評価すると、彼との生活は今後厳しいものになる。20歳という年齢もあるが、彼の仕事運は転職を繰り返すだろう。忍耐と根気がないからである。そうなると、給料も不安定、生活費もはいらない。赤ちゃんが生まれてすぐ、彼女が働きに出ないとやっていけない。
正直言って、もう少し彼の社会運が強ければ、私も安心するのだが・・厳しいと出た。
後は、彼女のやる気で彼をリードしてもらうしかない。彼女の方が社会運はいいのである。
彼女に、明日の夜来てもらうことにした。